はじめまして、EC課のガッシーです。
※スタッフの名前はニックネームで記載しています。
今日は私が好きな作家についてご紹介します。
チリの作家、ロベルト=ボラーニョ(Roberto Bolaño)です。
チリということで執筆言語はスペイン語です。
同じ言語圏では、『百年の孤独』で有名なガルシア=マルケスがラテンアメリカ文学の金字塔として君臨しているイメージがあります。
反対に、ボラーニョはその巨匠が放つ燦然たる輝きに影を落としている感が否めません。
実際に、ボラーニョの作品にはマジックリアリズム(=日常に超常現象を溶け込ませる芸術表現の一種)は殆ど見られず、どちらかといえば日常に接続した淡々とした表現が特徴です。
彼の小説には、本来語られなければ存在しなかった人々が登場します。
彼等の声にならない声————

今回ご紹介する『通話』はそれらの〈声〉を集めた14の短編集です。
そのなかでも表題作「通話」は6ページと最も短く読みやすいためおすすめです。
物語中盤、B(男)がX(女)へ半年ぶりに電話をかけるシーンがあります。
しかし、Xの反応があまりにも素っ気なくすぐに電話を切られてしまいます。
その後BはXへ無言電話をかけ、涙を流します。
たったこれだけの場面ですが、こうした声にならない声に共感を寄せ記述することで、ボラーニョ文学は淡白ながらもどこか胸に残ります。
また、ボラーニョ特有のシニカルな表現も面白いです。
例えば、吐き気を催したBがトイレに駆け込みますが、その際に蓋の開いた便器を「歯が一本もない歯茎が自分を笑っている」と比喩しています。
このように悲惨な状況でもクスッとしてしまうのが、私がボラーニョを好きな理由のひとつです。
他にも約900ページに及ぶ代表作『2666』などがありますが(私は寝食を忘れて読んだ思い出があります)、まずは短編から読んでみることをおすすめします。
最後に『通話』より「エンリケ・マルティン」という作品の冒頭を引用して終わります。
—詩人たるもの何事にも耐えられる。それは、人間は何事にも耐えられると言うのに等しい。だが、それは真実ではない。人間はほとんどのことに耐えられないのだ。真の意味で耐えるということが。いっぽう、詩人はあらゆることに耐えられる。その信念のもとに僕たちは大人になった。冒頭の表明は正しいが、その先には破滅と狂気と死が待ち構えている。
