このタイトルにドキッとする方はいらっしゃいませんか?
働いていると忙しくて本を読む暇がない〜なんて言いつつ、スマホを見ている時間はあるとか・・・。
私は思い当たるところが多々あります。
実際、この本のカバーに書かれたキャッチコピーは「疲れてスマホばかり見てしまうあなたへ」です。
著者の三宅香帆さんは幼少期から本が好きで日常的に読書をしていましたが、働き始めてから本を読まなくなっている自分に気づき、本を読むために勤めていた会社を退職します。
そして文芸評論の仕事をしながら、「働いていると本が読めなくなる」人は自分だけではなく沢山いるらしいと知り、その理由を紐解いて解決策を提示したのが、この本です。
内容うんぬんの前に、まず着眼点が面白い!!!
この本では書籍の歴史を紐解きながら、労働と読書が両立しない理由を論じて、最後に両立させる解決策を提示します。
三宅さんの解決策をものすご〜く大雑把にまとめると「全身全霊で働くから本が読めない。半身で働き、半身で他のこと(読書や他の趣味)をしよう」です。
そういえば、医学者であり東京大学名誉教授の養老孟司先生も「余裕がないと本なんて読めない」とおっしゃっていましたから、読書という行為にある程度の余裕が必要というのは一理あるかもしれません。
しかし同時に、労働時間を減らしたところで、それに比例して読書量が増えていくという訳でもないでしょう。
浮いた時間に読書をあてるのではなく、他の事をあてるケースも多いと思います。
スマホ、ゲーム、飲み会、デート、ショッピング、運動、家事、育児、睡眠など・・・こういった事に時間をあてる事はできるし、それでもまったく構いません。しかし読書とこれらの区別をあえてつけるなら、三宅さんがこの本で述べていた「読書とは自分から離れた文脈に触れること」という一文がしっくりきます。
自分が日常的に関わっている世界とは違う世界に触れることが読書であり、触れるために能動的かつ持続的なエネルギーを必要とします。
ゆえに、日常だけでいっぱいいっぱい(私の場合は仕事と育児)になると、本が読めなくなるのです。
「いっぱいいっぱい(余裕がない)」というのは時間においてもそうですが、精神においても言えることです。
私は自分の読書量が減っている理由が腑に落ちて、でもだからこそ、あらためて読書時間の確保は大事にしたいと思いました。