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2025年6月Vol.147 サクッと小噺 サクっと読書感想文 ≪ さんねん峠 ≫

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とある村に、「この峠で転んだら3年しか生きられない」と言い伝えのある峠がありました。
みんなとても気をつけて歩きますが、おじいさんがうっかり転んでしまいます。
「わしは3年で死ぬ〜」とショックを受けて寝込んでしまったおじいさんに、見舞いに来た若者が
「一度転べば3年生きるなら、二度で6年、三度で9年、四度で12年、生きられるってことだよ」と伝えます。
そこでおじいさんはあらためて峠へ出向き、何回も何回もわざと転びます。
するとどこからか「いっぺん転べば3年で、十ぺん転べば30年、百ぺん転べば300年…」という歌が聞こえてきたので
おじいさんはノリノリ。すっかり元気になって長生きしました。めでたしめでたし。

話自体も面白いのですが、特に印象に残っているのは、この話を取り上げた小学校3年生の時の国語の授業です。
みんなで教科書を読んだ後、担任の先生が問いかけました。「いっぺん転べば3年で、十ぺん転べば30年…と歌ったのは誰でしょう」
私は瞬時に「峠でしょ!」と思いました。峠の草木の声が、おじいさんに聞こえたと思ったのです。

先生は、ズラッと並ぶ生徒達を左の前列から一人ずつ、全員に回答させました。
「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」
「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」「若者です」…

みんなの回答は完全一致しているのに、私のとは違う。自分の番が迫るにつれて、どんどん心拍数が上がっていきました。
どうしよう、私は峠だと思う、私が間違いなのかな、そもそもこの質問にあってるとか間違ってるとかないのでは、
私が峠って答えれば流れが変わるかも、でも先生は困るかな…

流れ作業のように回答の順番がやってきて、私は当然という顔で答えました。
「若者です」
内心の葛藤に決着をつけて出した答えではなく、ただ「みんなが若者って答えるから」という理由です。
これが、私の記憶に残る最初の同調圧力です。

先日、図書館でたまたま「さんねん峠」の絵本を見つけたので読み返しました。
すると「歌っていたのは若者でした」と最後に書いてあるではありませんか。教科書ではこの部分は削除されていたと記憶しています。
だからこそ先生の問いかけもあったわけで。私ではなく皆が正解だったんだなぁ…。

大人になって読んでみると、情景描写がとても美しいと気づきます。
例えば「春には、すみれ、たんぽぽ、ふでりんどう。峠から麓まで咲きみだれました。秋には、かえで、がまずみ、ぬるでの葉。
白いすすきの光るころは、誰だってため息の出るほど、よい眺めでした。」という文章。
だから私は「歌っていたのは草木」と瞬間的に感じたのでしょう。
30年近い時を経て正解を知り、かつ自分の思考の経路にも納得しました。子供向けとはいえ、名作です。

 

この記事を書いた人サク

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