野生の熊

P.D.R.の山男竹内です。2013年から毎年、10月の3連休は白馬鑓温泉登山が恒例でした。
参加人数は初年度3人、翌年は5人、その翌年は10人と、回数を重ねるたびに参加者が増えていきます。
しかし、今年は0人。
と言うのも、今年の10月の週末は台風や前線の影響で雨ばかり。この時期の雨は山頂付近では湿った雪となります。冬用のハードシェル(ウェア)もびちょびちょになり、低体温症にもなりかねないということで、残念ながら2017年度は中止となりました。

写真は2016年の白馬鑓温泉の様子です。
この年も山頂付近では前日雪が降り、15cm位の積雪がありましたが、翌日は晴れたので登山を決行しました。しかし風がとても強かったため、皆早々に食事を終えてテントの中に引きこもりました。

風はテントのポールが折れるのではと思うくらい強く、テントの天井の布がたわんで寝ている顔に触れる位です。
夜も更けた頃、外から「カラン…カラン…」と言う音が聞こえます。
何の音か想像しました。
1)野生動物(熊)が何かをしている
2)他の登山者が夜遅くに登山している
3)心霊現象
私は(1)の可能性が最も高いと思い、隣で寝ていた友人を起こしました。ナイフを手に持ち、息を殺して寝袋の中でその時を待ちます。

強風でテントが「ガサッ」となるたびに身構えますが熊は出てきません。
何度もそんなことを繰り返すうちに、いつのまにか寝てしまいました。

目が覚めると朝でした。風は治まり、朝日が昇っています。
昨夜の「カラン…カラン…」の音の原因を探し歩くと、崖の下に、前日の食事に使用したシェラカップ(チタンやアルミニウムでできた簡易食器)が転がっていました。
“野生の熊”の正体は、風に吹かれたアルミニウムのカップでした。
シェラカップを回収し、朝日を浴びて源泉かけ流しの湯につかりながら「森のくまさん」をハミングした2016年の白馬鑓温泉でした。