ちょっと涼しくなる話

夏ですね。毎年恒例のちょっと涼しくなる話を制作の山男竹内がお届けします。

 

すごく昔、若い頃にお付き合いしていた彼女は自称「霊感の強いヒト」でした。当時の私は全く怪奇現象など信じておらず、半信半疑で彼女の心霊体験を聞き流していました。

 

エピソード1:人形の行方
幼少の頃、心臓の病気で開胸手術を行い、1年ほど入院生活を送っていた彼女。
病院では友達ができず、人形の髪の毛を切ったりして遊んでいたそうです。
その後、彼女は無事退院して家に戻りました。
彼女の部屋は天井に扉がついており、天井裏の物置に続く階段が格納されています。
大人になったある日、ぼんやりと天井を見つめながら、彼女はその人形の事をふいに思い出しました。

「あの人形はどこに行ったのだろう?」

 

その瞬間扉が開き、彼女に髪を切られた人形が天井裏から転がり落ちてきたそうです。

 

エピソード2:ピアノ
彼女の部屋にはアップライトのピアノがあります。
ある夜、人の気配を感じて目を覚ますと、見知らぬ女性がピアノの椅子に座り、彼女の方を見ていました。
金縛り状態で、怖くて目を強く閉じているうちに眠ってしまった彼女。
しばらくして目を開けると、先ほどの女性の顔が目の前にありました。

 

エピソード3:巻き込まれた私
そんな彼女とある夏の始まりに、洒落たフランス料理店でディナーをしました。
彼女は白いワンピース、私はスーツという気合の入った出で立ちです。
食事を終え、近くのお寺の奥にある展望台へ向かいました。灯台の明かりが綺麗だったのを覚えています。
手をつないで歩く帰り道、彼女が突然強く私の手を握りました。
「どうしたの?」と聞くと「今は言えない・・・」

 

駐車場近くまで来た時に、彼女から告白を受けました。
「さっき手をぎゅって握った場所で、お婆さんが立ってたの、見えた・・・?」
前日の雨で駐車場はぬかるんでおり、水たまりがあちこちにできています。
私は彼女の手を強く強く握り、全力で自分の車まで走りました。

 

彼女を自宅まで送り、ご両親に挨拶した時のお母様の一言。
「なんで二人ともそんなに泥んこなの、フランス料理食べて来たんじゃないの?!」
怖さのあまり水たまりで二人で転び、車の中で喧嘩した事が一番の思い出です。
(私)なんであんな怖い事言ったんだよ!
(彼女)あなた、霊なんて信じないっていつも強がり言ってるじゃん!!
(私)つ、強がりってわかってるなら言わないでくれよ!!!

 

そんな彼女も今では他の男性と温かい家庭を築いているそうです。