2023年8月Vol.125 サクッと小噺

※小噺は過去分を随時アップしております。内容に時差がある場合もありますが、是非ご覧ください。

ラグビーワールドカップが開催中ですねっ!そろそろグループ別の試合も佳境を迎えて、トーナメント戦が始まります。今年はフランス開催なので、4年前の日本開催に比べると時差の関係で、少しだけ観戦しにくい試合時間もありますが、それでも楽しい大会です。
私は普段からスポーツの大会を熱心に観戦するほうではなく、毎回「にわかファン」として、その時に盛り上がっているモノを軽く楽しむ程度です。熱くなった記憶もたいして長続きしません。そんな私でも、4年前のラグビーワールドカップは鮮烈に覚えています。TV観戦中、何度も大笑いしてしまいました。「カッコ良すぎると笑っちゃう」という自分の新たな一面を知った大会でした。
ラグビーは「危ないからやめなさいっ」と言いたくなるようなプレーで溢れています。たとえばタックル。ボールを持って全力疾走するオフェンス選手を止めるために、ディフェンス選手は逆方向から全力疾走してきてオフェンス選手に飛びかかり、2人そろって地面に倒れます。一般人でさえ、お互いに逆方向から全力疾走して激突すれば痛いでしょう。それをゴツゴツの大男同士で行うなんて・・・。
骨が折れても、内臓が破裂しても、おかしくはありません。たとえばスクラム。両チームから特に筋力が強くて体重の重い複数人が出てきて、お互いにガッチリと体を組み合って、全力で押し合いへし合いします。
団体で行う相撲みたいなかんじです。一対一でも危ないのに、複数人で相撲なんて・・・。押し合っている最中も危険ですが、うっかり倒れたりスクラムが崩れたりしたら、下敷きになった選手は命を落としかねないほど圧迫されてしまいます。
それでいて、アメリカン・フットボールなどと違ってラグビーには防具らしい防具もありません。

ラグビー協会もラグビー選手も、ラグビーが危険をはらんだスポーツである事はわかっています。でも、彼らは危険な事をしたいわけでも、敵を怪我させたいわけでもなく、ただただ純粋にラグビーを楽しみたいし、素晴らしいエンターテイメントのような試合をしたいと考えています。そこで肝になってくるのが「ルール」と「信条」です。ラグビーは「今はタックルしてOK、今はタックルしたら反則」や「今は手を使ってOK、今は手を使ったら反則」など「今OKなプレー、今NGなプレー」が試合中にどんどん変わります。また、ラグビー用語で試合終了を「ノーサイド」と呼びますが、これは「試合が終われば敵味方なし」という意味です。更にラグビーは、「品位・情熱・結束・規律・尊重」という基本理念を持つ憲章も掲げています。
複雑なルール、独特の用語、憲章、これらはすべて「危険なプレーだからこそ、危険を排除しつつ楽しめるように作られた知恵」と言えるでしょう。
興味深いことに、ラグビーもサッカーも、ルーツは同じで「フットボール」だそうです。昔のフットボールは地域のお祭りの一種で、人数もルールも曖昧でした。それこそ「1丁目から3丁目は赤チーム、4丁目から6丁目は青チーム」というようなチーム分けだったし、手も足も使っていて、地域によってルールが少しずつ違いました。とにかくボールを奪い合って遊んでいたわけです。しかし、学校で競技として行うようになり、別地域との交流も始まると、ルールを統一する必要がでてきます。
その時に「今は何でもアリで危なすぎるよ。手でボールを触るのは禁止にしよう。コートのどこにボールがあるのか常に可視化できるスポーツにしよう」と言い出した人達が、後のサッカーに繋がります。「手も足も使えるから面白いんじゃん。
ボール争奪戦でボールが見えなくなるのは当然じゃん。それらを禁止したらつまらない。禁止せずに、負傷者が出ないように規則と心を整えようよ」と言い出した人達が、後のラグビーに繋がります。どちらの言い分ももっともで、どちらも人類の宝ともいえるスポーツに成長したので、当時の分岐に感謝したいな、と思います。
ただ、私の個人的な趣向としては、ラグビーの「危険なことを危険でないように行う」点に「カッコいい〜」とキュンキュンします。どんなスポーツも冷静と情熱が同時に必要ですが、ラグビーは特にそれを強く感じます。
決勝まであと1ヶ月、まだまだときめきは続きます♡