2012年10月号Vol.4

こんにちは、サクライです。私は日本で生まれ、高校まで日本で学び、なんとなく勢いでカナダの大学に入学して、頑張って卒業しました。時々「じゃあ英語ペラペラなんだ!」と言われる事がありますがとんでもありません。凡人が外国語ペラペラになるためには、遅くとも15才までに習得しなければいけないそうです。
それまでロクに英語を学んでこなかった人間が海外の大学を出たところで、語学力は貧弱です。
少なくとも私はそうです。そんなわけで、今月はあまり役に立たない英語の話です。

 

外国語を学んでいて「面白いなぁ」と思うのは、その言語特有の「言いまわし」です。
“a piece of cake(簡単だよ)”はご存じの方も多いのではないでしょうか。
さて、私が感動した表現に“have good chemistry(ハヴ グッド ケミストリー)”というものがあります。

“have(持っている)” “good(良い)” “chemistry(化学 / 化学現象)”

 

H2(水素)+O2(酸素)→ 2H20(水)は中学で習いましたよね。ソレをイメージしてください。
水素と酸素が結合して水が生まれるように、あなたと私が出会って良い反応を起こす時― we have good chemistryと言うんです。訳すなら「相性が良い」ですが、日本語の「相性が良い」よりも、二人の関係に根本的なニュアンスが感じられます。
日本語で説明するのは難しいのですが―…「本能的に」、「細胞レベルで」、相性が良いとでもいいましょうか。誰かと誰かが化学反応を起こしている―そんなイメージはとても美しいです。

 

“have good chemistry”を学んだのは、友人との会話からです(もちろん会話は英語なので、私はよく変な勘違いをしていました)。カナダ人女子と留学生男子の恋の話…。
「初対面の時まだ彼は英語ができなかったんだけど、they have good chemistryでお付き合いが始まって―」そんな話でした。
この言いまわしを知らなかった私は「二人とも化学専攻で優秀なんだな。
化学式の筆談で盛り上がったのかしら」と思いました。
途中で、会話が噛み合っていない事に気づいた友人が
“have good chemistry”の意味を説明してくれました。

 

 「えぇー、そういう意味だったの?!すごく上手い表現だね!
  あ、じゃあさ、カラダの相性がいい時は
  “have good biology(生物学)”って言うの?」

 「言わないよっ!!!(怒)」

―まぁ確かに、カラダの相性がいい事をhave good biologyと言うのは、あまり美しくないです。

  
先に述べたとおり、私は特に英語が好きでも得意でもありません。そもそも語学の勉強は中学の時から嫌いです。でも、こういった「言いまわし」を知るのは楽しいんです。他の言語には訳せない上手い表現というのは日本語にも英語にもあって、その絶妙なニュアンスに、言葉の美しさを感じます。
友人、恋人、家族、仕事仲間―あなたと良い化学反応をおこしている方を思い浮かべてください。
その人とあなたは“have good chemistry”です。