恋人岬

品質管理の吉村がお送りいたします。
私は子供の頃、グァム島に住んでいました。
今日は、グァム島に古くから伝わる言い伝えの話をします。

 

昔々、まだ現代の様な文明が発達していない頃、人々は魚釣りや山菜採りを生活の軸にしていました。
都会の喧騒とは縁のない、緑豊かな南国の楽園に暮らすその人々は、チャモロ族と呼ばれるグァム島の先住民族でした。

 

チャモロ族を束ねる族長には美しい娘がいました。
浅黒い肌に束ねた長い黒髪。
婚約者はチャモロ族一番の力持ち。
二人は北西にある岬で愛の約束を交わしました。

 

その後、スペイン軍がグァム島にやってきました。
チャモロ族は、海の向こう側の来訪者を歓迎しました。
スペイン軍は、今までグァム島になかった、生活を豊かにする技術や知識を分け与えてくれました。

 

やがて、軍に同行していたスペインの貴族が族長の娘に恋をしました。
貴族は族長に、娘を嫁に迎えたいと申し入れました。
欲しいものは絶対手に入れなければ気が済まない貴族は、族長を脅します。
「娘を渡せ。さもなくば、この島に住む者たちに危害を加える。」
チャモロ族は、生きる術は知っていても戦う術は知りません。
族長は、自分たちに勝ち目がないことを知っていました。

 

話を聞いた族長の娘は困惑しました。 
愛を誓った婚約者がいる。
しかし、自分が貴族と結婚しないと、島の人たちを危険にさらすことになる。悩み苦しみました。

 

悩み続けた族長の娘は、婚約者を愛を誓ったあの岬に呼び出しました。
婚約者に事情を説明すると、男はスペイン軍に戦いを挑むと言いました。
しかし、それは無謀であり、チャモロ族全員の命をさらに危険にさらすことになります。
良い解決策は出ませんでした。

 
そして二人が出した答えは、その岬から身を投げることでした。
二人は肉体を捨て、魂は共に母なる海の一部となりました。

 

以上です。
ハッピーエンドではありませんが、形に残らない愛の形、というものに私は心動きます。
二人の魂が永遠に結ばれたとするグァム島北西の岬は、今では「恋人岬」という名でグァムのもっとも有名な観光スポットになっています。
二人の決断が正しいものなのかどうかは、私にはわかりません。
愛の形は人それぞれです。
しかし、二人の姿は残らずとも魂は結ばれたと考えると少し心がほっこりします。

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。