美空ひばり復活 2019年12月26日

※スタッフの名前がニックネームに変わりました。

今回はシステムのはせぴーより、先日NHK総合にて放送されたドキュメンタリー番組「NHKスペシャル よみがえる 美空ひばり」を観て私が感じたことをお話させて頂きたいと思います。

実際にテレビをご覧になった方も多いかと思いますがどんな番組だったかを簡単に説明させていただくと、AIによる音声再現技術とCGによる映像再現技術によって故・美空ひばりさんが、観客の前で新曲「あれから」を披露するまでの開発プロジェクトを特集した番組でした。この番組の後、Twitter上では「美空ひばり」がトレンド入りするほど反響があったようです。

 

この番組の内容の何がすごいかというと、一つは、最新のAI(人工知能)技術を用いて、美空ひばりさんの歌声だけでなく、歌い方や話し方の癖まで再現できる音声合成システムを作った技術。

 

もう一つは、そのAIにより秋元康さんがプロディースした新曲「あれから」をCGの美空ひばりさんが観客の前でを披露した上に、その歌を実際にCD化して発売までされたところです。亡くなったアーティストの歌声をAIによって蘇らせ、本人が歌ったことのない新曲がCDとしてリリースされるのは世界初の試みだったそうです。

 

今回このAI技術はヤマハが全面協力していて、ヤマハが開発した音声合成ソフトウェア「VOCALOID」というソフトをベースにしているそうです。「VOCALOID」といえば「初音ミク」などのキャラクターで使用されているソフトで、すでに15年以上の歴史があります。この「VOCALOID」というソフトは基となる人間の声を録音し、それを切り貼りして歌声を作る技術なのですが、今回はより美空ひばりさんに近づけるために、「VOCALOID」ソフトにAIのディープラーニングという手法を合成して、コンピューターに美空ひばりさんの生前の様々な音源から歌声や歌い方、話し方の癖まで学習させて、本人が歌ったことのない曲でも本人らしく歌えるよう音声の調整を繰り返したそうです。

 

美空ひばりさんの歌をもう一度聞きたいと思っている人たちにとっては素晴らしい技術だと思いますが、倫理的な観点から、ヤマハの技術者たちは「冗談でやっていいことではない」と強い思いを持って開発していたそうです。

 

故人の声や歌を蘇らせるというのは倫理的な課題が山積みで、場合によっては、故人を侮辱するような使い方もできてしまいます。近年ではこの技術を使って悪意のあるフェイク動画を作る「ディープフェイク」というものも出現し、問題視されています。本人の知らないところで、本人の意図しない文章をあたかも本人がしゃべったかのように聞かせることも、歌いたくない歌を歌わせることも、現在の技術があればできるのです。そんな中、今回のプロジェクトが実現したのには、開発者たちの「あの感動をもう一度届けたい」という強い思いがあったからだそうです。

 

今年の大晦日に放送される「第70回NHK紅白歌合戦」で美空ひばりの歌声が復活することも発表されました。是非大晦日に再び復活する美空ひばりさんを観てみてください。

 
詳しく見る