人工知能

こんにちは。
今回はシステム担当の長谷川が最近話題になっているコンピューターのお話をお届けします。

 

1月28日にグーグルの研究グループがイギリスの科学雑誌「ネイチャー」に1本の論文を掲載しました。その内容は、最新の人工知能技術を使ったコンピューターが世界最強と呼び声の高い囲碁チャンピオンにハンディなしで対局し、5戦全勝したというものです。コンピューターがゲームで人間に勝ったことがそこまで大事なのか、不思議に思う人もいると思います。この出来事は世界中の人工知能の研究者はもとより、囲碁の世界にも大きな衝撃を与えたのです。

 

囲碁と似たような対戦ゲームにチェスや将棋がありますが、チェスや将棋は既にコンピューターが人間の実力を上回っているとされています。
チェスでは、1997年にスーパーコンピューター「ディープブルー」が当時の世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフ氏に勝利し、世界中で大きな話題となりました。
また、将棋では、4年前にコンピューターがプロ棋士の米長邦雄氏を初めて破り、その後もコンピューターは何度もプロ棋士に勝利しています。

 

一方、囲碁ではこれまで人間に勝てるコンピューターは存在しませんでした。
その理由として、チェスや将棋と比べ囲碁は盤が広い点や、コマの動きに制限が少ない点があげられています。たとえば対局のパターンは、チェスの場合はおよそ10の120乗、将棋の場合はおよそ10の220乗。

しかし、囲碁の場合、パターンは10の360乗以上とされています。
これまでのチェスや将棋では、人工知能は可能性のある局面をすべて計算し、最適な一手を探すという手法が使われてきました。
この手法では、囲碁のようにパターンが多いと、最新の人工知能をもってしてもすべてを計算しつくすために膨大な時間がかかります。
そのため、エンジニアの間では、囲碁に関しては人工知能がプロ棋士の実力に追いつくにはこの先10年以上かかるだろうとされてきました。
人間にとって囲碁は「最後の砦」だったわけです。

 

今回のグーグル研究チームは「ディープラーニング」という技術を使って人間を超えました。
これは何なのか?

 

今までコンピューターは命令に従って答えを計算するだけでしたが、「ディープラーニング」は、人間の脳と同じような働きを取り入れた技術です。
脳細胞が電気信号によって膨大なデータを脳内ネットワークで処理をしながら記憶し、学習していくという仕組みを人工知能で再現したのだそうです。

 

30年以上前のハリウッド映画「ターミネーター」では、「人工知能が人間を支配する」ことがファンタジーとして描かれていましたが、それが少しずつありえる世界になってきていることを改めて感じました。

 

そして、今回紹介した「AlphaGo」という人工知能ですが、3月9日からソウルで世界最強の韓国人棋士と対戦中です。3月14日現在、人工知能が3連勝した後に棋士が初めて1勝したというニュースが報じられました。既に人工知能の勝ち越しが決まっていますが、ようやく1勝を挙げた棋士は対局のあと、「こんなにうれしい勝利はない。なににも代えがたい、価値をつけられない1勝だ」とほっとした様子で話していたそうです。
 

一方、ソフトの開発チームの担当者は「きょうの敗北はうれしい結果だ。ソフトの弱点を改善するために活用したい。5局目も楽しみだ」と余裕を見せていたそうです。