2019年1月Vol.79 サクッと小噺

※小噺は過去分を随時アップしております。内容に時差がある場合もありますが、是非ご覧ください。
※スタッフの名前がニックネームに変わりました。

 

こんにちは、サクです。
お正月気分は抜けましたか? 年末年始はクラシックの演奏会が多いので、音楽好きの私の父は、演奏する側になったり鑑賞する側になったりしながら、年末年始を満喫した様子です。さて、私は昔から「尊敬する人は?」と問われたら「父と内田樹とP.D.R.で最初についた上司」と即答なのですが、最近、父への尊敬が更新されました。今月はそんな話をさせてください。

父は中学の部活でホルンを始めました。

家族の中でなぜか彼だけクラシック音楽にハマって、高校、大学もホルンを続けて、大学のオーケストラ部で母と出会います。ちょっと血迷って母と学生結婚して、卒業して、就職して、演奏する場を失います。しょせんは学生の部活動ですから、卒業と同時に終了です。

 

しかし、彼は音楽を続けたかったのです。演奏する場がないなら作ってしまえ!と沢山の人に声をかけ、自分が参加しやすい地域で活動する、アマチュアオーケストラを設立しました。アマチュアといえども、人が集まればいろんな問題が起こります。私が物心ついたときから、父はそういった問題と向き合っていました。

父「各楽器のリーダーを決めたい。
  チェロはA君が1番うまいが、練習の出席率がイマイチ」
私「1番うまいならいいじゃん」
父「個人として能力が高い事と、
  リーダーとして力があるかは、ちょっと違う」

父「海外に新事業所ができて出張が増えた…。

  出張がオケ練(オーケストラの練習)にかぶらないように調整しないと」
私「仕事でオケ練休むのは仕方ないでしょう」
父「仕事だからこそ!だよ。仕事は長期戦。
  仕事をできない理由にすると、ずっとできない」

 

そんな会話をよく覚えています。子供ながらに、父をカッコいいと思いました。「ホルンを吹く父」が好きというよりも、「大好きな音楽のために組織運営を考える父」、「仕事と趣味の両立といいつつ、実は趣味を優先する父」が好きだったんです。

 

さて、そのオーケストラも23年目。先日、地域の合唱団と協演する演奏会があったのですが、男声パートの人数が足りませんでした。そこで父が一念発起。「僕も歌う。」ホルンを置いて、54才にして合唱に初挑戦しました。他の男声陣は全員経験者で、自分が足を引っ張るわけには
いかないと、1年間猛特訓していました。そして本番では、ヴェートーヴェンの第九とモーツァルトのレクイエムを見事に歌いきりました。もちろん私も聴きに行きました。レクイエムはとても美しくて、感動して何も考えられませんでしたが、第九はまぁまぁだったので、他の事 を考える余裕がありました(父が聞いたら悲しむなぁ)。

 

少年期にホルンを始めて、青年期にオーケストラを設立して、壮年期はオーケストラ運営に注力して、54才で40年間持っていたホルンを置いて、合唱の「新人」として奮闘・・・その一方で、働いて、娘2人を育てあげた。あぁ、この人は人生を謳歌している! 父への尊敬が更新された瞬間でした。

父は「来年は、一曲は歌って、一曲はホルンを吹きたい♪♪」と今から意気込んでいます。54才の中年親父が、とても眩しく見える今日この頃です。

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